【海水魚の餌】 第10回:
私がツノナシオキアミを魚たちの主食に選んだ理由 ―最高レベルの餌生物

Published: 2026.02.28

前回までは、人工餌の限界や生餌のメリット・デメリットについて触れてきました。
10年前、私が試行錯誤の末にメインフードを冷凍餌へ切り替えていった話もしました。

そんな私が 「魚たちの主食に選んだ」のが、養殖業や水族館で十分な給餌実績があり、日本近海で水揚げされるツノナシオキアミ(イサダ)でした。

今回は、なぜ私が「ツノナシオキアミ推し」なのか、どんな栄養的魅力があるのかなどを深掘りしていきたいと思います。

なお、ツノナシオキアミを採用するに至った経緯については、過去記事「第2回:魚のための餌とは何か?」で触れていますので、興味のある方は併せてご覧ください。


1.そもそもオキアミとは?

オキアミ類(オキアミ目)は、全世界の海に生息するプランクトン性の甲殻類で、
現在、2科10属約85種が知られています。

南極・北極から熱帯のサンゴ礁域に至るまで、世界中の海の魚にとって重要な餌資源であり、海洋生態系の食物連鎖を支えるキーストーン種(鍵種)です。

オキアミ類は魚類に限らず、鯨類・鳥類など海洋生物の栄養源としても重要な役割を担い、その総バイオマスは極めて大きいことが知られています。


オキアミの群れのイメージ図

ちなみにオキアミは、見た目はエビ(エビ目)やイサザアミ(アミ目)にそっくりですが、実は全く別の生き物で、オキアミ目という独自の分類群に属しています。体構造、生態、発生様式、栄養特性などにも違いがあるのが特徴です。
なお、オキアミは英名でKrill(クリル)と呼ばれており、「それなら知っている」という方も多いかもしれません。

商業漁業の対象となるオキアミ類はごく一部で、
南極海のナンキョクオキアミ(Euphausia superba)
太平洋のツノナシオキアミ(Euphausia pacifica)
大西洋のキタオキアミ(Meganyctiphanes norvegica)
が中心です。

人の食品、養殖魚の餌、釣り餌、水族館やアクアリウムの餌など幅広く活用されています。
ちなみに、日本近海で漁獲されるツノナシオキアミは“イサダ”の名でも知られ、三陸地方ではイサダ漁は春の風物詩としてニュースになるほど親しまれています。
皆さんがよく目にする、お好み焼きやたこ焼きに入っている「小エビ」も、実はツノナシオキアミを塩ゆでして乾燥させたものです。

そして近年では、人の健康分野でも、オキアミから抽出される「クリルオイル」がDHA/EPAなどのオメガ3脂肪酸や、天然の抗酸化成分であるアスタキサンチンを豊富に含む供給源として、世界中で健康食品・サプリメント・化粧品などで利用されています。

一方、水産学の分野では養殖魚の餌料・餌原料として国内外で広く研究が行われている餌生物でもあります。
様々な研究から魚類の成長率向上・飼料効率改善・健康状態改善・ストレス耐性向上・繁殖成績改善などの報告が数多く存在します。

そんなわけで、世界中の海で魚が餌にしているオキアミを「我が家の魚たちの主食にどうか?」と注目してしまったのは、私にとって必然でした。

それでは、ツノナシオキアミの栄養特性から、詳しく見ていきましょう。


2.ツノナシオキアミの“餌としての魅力”

これまで「生餌のメリット」では、生餌が持つ様々な栄養的な利点について詳しくお話してきました。

ツノナシオキアミは、それら“生餌のメリット”をまるごとぎゅーっと詰め込んだような非常に優秀な餌生物です。

第3回:生餌のメリットⅠ第4回:生餌のメリットⅡを参照ください。
その順序で、具体的なメリットを簡潔に振り返ってお伝えします。


■嗜好性が高い

魚が好むプロリンやアラニンといったアミノ酸が豊富に含まれており、これらが“魚を寄せる誘引物質”として機能しています。(「養殖の餌と水」恒星社厚生閣)
嗜好性の高さは第3回:生餌のメリットⅠ 第1章にも詳しく書きましたが、他にも様々な栄養利点や魚の生理的機能の活性などにも役に立ちます。


■プロテアーゼ活性が高く消化がとても良い

オキアミ自身が強力な自己分解酵素(プロテアーゼ)を持っており(小長谷, 1980)、魚が食べた後もその作用が続くため、消化吸収に優れています。

これは人工飼料では再現できない大きなメリットです。第3回:生餌のメリットⅠ第2章で詳しく解説しています。


■DHAが豊富

オキアミは高脂質種で、海水魚にとって欠かすことの出来ない必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸のDHA・EPAが魚卵や小魚並みに豊富です。
含有量は生重量あたりEPA約250mg、DHA約150mg。

不足すると様々な弊害をもたらします、詳しくは第3回:生餌のメリットⅠ 第3章でふれています。


■タウリンが豊富

オキアミは甲殻類の中でもタウリン含量が高めで、人工飼料だけでは不足しがちなタウリンを十分補えます。

タウリンの重要性については第4回:生餌のメリットⅡ 第4章を参照ください。


■アスタキサンチンが豊富

オキアミは赤橙色の体色そのものが証明するように、餌生物の中ではトップクラスのアスタキサンチン含有量を誇っています。この天然色素は魚の発色維持、抗酸化作用に優れています。

天然アスタキサンチンの優位性については第4回:生餌のメリットⅡ 第5章を参照ください。


■キチン質が多い

甲殻類の殻のキチン質は、海藻のセルロースや多糖類と同様に “海水魚における食物繊維” の役割を果たし、腸内の流れを整える作用を持っています。


■栄養バランスが優れている

「一物全体食」については何度かお話していますが、丸ごと与える事で、
前述した栄養特性以外にも
基本となる良質なタンパク質、カルシウムなどの各種ミネラル、各種ビタミンなど生き物にとって欠かせない栄養素をバランス良く与えることが出来ます。

つまり総合すると、ツノナシオキアミは嗜好性・消化性・栄養密度のすべてを高水準で満たした餌生物というわけです。

ざっとあげただけですが
とにかく、調べれば調べるほど海水魚の餌としてのオキアミの栄養的魅力に引き寄せられました。
こんな優秀な餌生物を使わない手はないとさえ思いました。


我が家の魚たちの主食の三陸エンリッチメント研究室のツノナシオキアミ 業務用パック500g だいたい3週間程度で使い切ります。
我が家の魚たちの主食の三陸エンリッチメント研究室のツノナシオキアミ
業務用パック500g
だいたい3週間程度で使い切ります。

こんな魅力的な餌生物が日本で漁獲があるのにも関わらず
何故、日本のアクアリウムに普及していないのでしょう?

次はその辺りをお話してみます。


3.なぜCAS冷凍が良いのか?

■市販の冷凍ツノナシオキアミ


ツノナシオキアミの一般市販の冷凍品(釣具屋で売っている「アミエビブロック」など釣り餌・養殖魚用)は、解凍時点で既に身が崩れ、特有の匂いもしますし、ピンク色の濁ったドリップに水溶性の栄養素が流れ出ている状態です。

これはツノナシオキアミが強力な自己分解酵素(プロテアーゼ)を持っているため、通常の冷凍加工工程「水揚げ→工場搬入→加水→冷凍」ではどうしても避けられない問題なんです。

ブロック状に形成するには加水はどうしても必要で、自己分解が進んでる状態で加水すると更に自己分解が進むという悪循環が生まれます。

サびキ釣りを経験した方ならご存じだと思いますが、解凍後、常温で放置すると
短時間でさらに自己分解が進み、ドロドロになって異臭を放つようになります。
ツノナシオキアミはとても繊細で傷みやすいのです。

栄養価に優れた生の冷凍ツノナシオキアミがアクアリウムで普及しづらかった最大のハードルのひとつだと思います。
一般市販の冷凍品をそのまま水槽に使うと、水質を悪化させるだけでなく、魚が本来必要とする水溶性栄養素も十分に届けられないからです。

自己分解酵素(プロテアーゼ)活性が高いという事は、生餌の最大のメリットの消化の良さを引き出す反面、傷みやすいという最大のデメリットと表裏一体で諸刃の剣と言えるかも知れません。

※注意:
釣り餌用で「形が整った不凍タイプ(刺し餌用)の冷凍オキアミ」が販売されていますが
これらには酸化防止剤・防腐剤・不凍液・高濃度の塩分などが多量に添加されてると考えられます。
水槽の魚には絶対に与えないでください。


■CAS精密凍結・活餌料ツノナシオキアミ

そこで登場するのが、
私が長年愛用している三陸エンリッチメント研究室
CAS精密凍結・活餌料ツノナシオキアミ
です。

CAS(Cells Alive System)とは、食品だけでなく、iPS細胞の凍結保存など医療分野にも使われている高性能冷凍機で、細胞を壊さず、解凍後も凍結前と変わらない品質を維持できるのが特徴の先進的な冷凍技術です。

もともとは「人の刺身用CAS冷凍ツノナシオキアミ」を魚の給餌用に2017年に提供いただいたのが始まりでした。
(経緯は第2回:魚の餌とは何か?で紹介しています。)


解凍後の三陸エンリッチメント研究室のCAS冷凍ツノナシオキアミ 今にも動き出しそうな鮮度のままです。
解凍後の三陸エンリッチメント研究室のCAS冷凍ツノナシオキアミ
今にも動き出しそうな鮮度のままです。

三陸エンリッチメント研究室の製品は、
地元漁業関係者と連携し、水揚げ後、すぐ新鮮なまま
CASで凍結するため、身崩れやドリップはほとんどありません
なので、第2章で述べたオキアミの栄養的なメリットをまるごと享受できる理想的な冷凍餌です。

自己分解の速さという最大のデメリットを先回りして抑え込んでいる感じでしょうか。
素晴らしい冷凍加工技術で、オキアミの栄養的魅力を水槽内で存分に発揮してくれる、そんな製品です。


4.まとめ

今回はオキアミについて詳しくお話させていただきました。
私が調べた限り、魚類にとって栄養的魅力が最高レベルの餌生物のひとつだと考えています。

本来は海水魚に限らず、淡水魚や両生類にも幅広く使えるのですが、
日本のアクアリウム界隈では「乾燥クリル」くらいしか普及しておらず、残念ながら生の冷凍品は釣り餌用以外はほとんど流通していません。

日本近海で漁獲されるツノナシオキアミの餌生物としての魅力が広く認知されれば、もっと豊かなアクアライフが実現するのに──と、つい思ってしまいます。

現在、日本で高品質なツノナシオキアミのアクア用冷凍餌
手に入るのは、三陸エンリッチメント研究室さんのみです。
もし興味を持っていただけたなら、ぜひCAS冷凍の ツノナシオキアミを魚たちの主食に加えてみてください。きっと魚たちの調子や体型や色に、良い変化を感じられるはずです。

ちなみに余談ですが、アクアリウム先進国アメリカをはじめとする諸外国では、 ツノナシオキアミを「Krill Pacifica」と呼び、海水魚・淡水魚用の冷凍餌として既にその栄養価を高く評価し、広く普及しています。

遅れるな日本のアクアリウム!!!


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